エメラルドは、ベリル(緑柱石)という鉱物のグループの変種です。
強い緑色を呈するベリルをエメラルドとし、薄い緑色は、グリーンベリルと呼ばれエメラルドとは区別されます。

結晶系:六方晶系
化学組成:Be3Al2Si6O18
屈折率:1.577-1.583(+-0.017)
モース硬度:7.5-8
比重:2.67-2.90

コロンビアやブラジル、ザンビア、南アフリカなどが主要な産地として挙げられますが、コロンビアのムゾー、チボール鉱山は、特に良質なエメラルドの産地として有名です。
コロンビア産の特性として、顕微鏡で見ると、特徴的な内包物があり、液体、個体、気体の三態、いわゆる三相インクルージョンが見られます。
 
エメラルドのグリーン
エメラルドのあの鮮やかな美しい緑色は、微量に含まれている酸化クロムに起因しています。この酸化クロムは、ルビーの 鮮やかな赤色の決め手でもあり、同じアルミニウムとクロムの置換によってどちらかに発色しますが、この色の違いは酸化の 原子価の相違によるものと考えられています。
エメラルドには微量の鉄分も含まれ、これもエメラルドの色に微妙に影響を及ぼしています。
エメラルドの緑色の決め手となる酸化クロムは、かなり深い地層にあるため、エメラルドの産地や産出量が限られてしまいます。
 
エメラルドのキズと硬度
『キズの無いエメラルドを得ることは、欠点のない人間を探す より難しい』といわれるほど、エメラルドには、『石れい』と呼ばれる内部のひび、キズを含めた内包物が多く見受けられます。
それらは、結晶生成時に必然的に内包され、それが天然石である明らかな証拠となっています。
内包物をキズというのは適切ではなく、割れやカケのような、その宝石の致命的な欠陥として、価値を低下させるキズとは根本的に違います。
硬度は、7.5-8と、比較的硬い宝石ですが、内包物が多いため取扱いや保管には注意が必要です。
 
コロンビア産が、質・量ともにNo.1
古代エジプトのクレオパトラ鉱山をはじめ、エメラルドの発掘は、国王や侵略者、また探険家達によって様々な形で行われてきました。
多量のエメラルドを産出したクレオパトラ鉱山は、既に採りつくされましたが、スぺインの探険家ピサロによりヨーロッパに知れ渡った南米コロンビアの鉱山は、その後も新しい鉱山が発見され、現在も世界のエメラルドの80%を産出しています。
コロンビアのアンデス山中にある首都ボコタの北方一帯がエメラルド鉱山群でそのひとつ歴史的にも有名なチボール鉱山は、スペインによる征服以前から『緑色の石の神』と呼ばれ、原住民インディオの手で採掘されていました。 世界で最も美しい色のエメラルドを産出するのは同地方のムゾー鉱山で産出量も世界一を誇っています。
 
エメラルドの歴史
その美しい緑は数々の人々を魅了し、多くの伝説や逸話を残し、かの有名な絶世の美女クレオパトラ女王もエメラルドを身にまとい、鉱山まで所有したほどこよなく愛した宝石です。 4000年前より知られ、魔除け、広い視野、眼力、知恵、記憶力などを司る石とされ、古代ローマでは神像の目に使われるなど、眼とかかわりを持った石でもあります。
また、宝石言葉としては幸福という意味があり、現在でも色つき宝石の中で最も高価で根強い人気を持っています。